What is IT ?

「IT」とか「IT革命」ということばの一般的な意味は、
IT(Information Technology)=情報技術
IT革命
 パソコンなどの情報機器とインターネットなどの情報通信ネットワークの技術の進歩によってもたらされる社会の大きな変化のこと
ということになるでしょう。しかし、さらにもう少し掘り下げてその意味することについて考えてみます。
第3番目の「革命」
 世の中の仕組みやあり方が一変してしまうことを「革命」と呼びます。人類は、これまでに2つの革命を経験しました。その第1番目のものは、数万年前の農業革命です。自然の植物や動物を採取・捕獲して食糧としていた時代から、自らの住居の近くで植物を栽培する時代へ移行したことは、革命的なできごとでした。農耕は、自然の植物の替わりに自ら栽培した農作物を食糧とすることであり、それは本来の自然の摂理に反することでもありました。その第2番目のものは、18世紀に始まる産業革命です。産業革命はエネルギー革命ともいわれます。牛馬や水や風などのエネルギー源から、それらの数万倍もの力を出す火のエネルギー源へ移行したことは、やはり革命的な出来事でした。動物は生活の糧を手に入れるときは必ず自らのエネルギーを使うのに対して、人間は、火のエネルギーで動く機械を自らの手や足の「代替」とできるようになりました。それは自然の摂理に著しく反することでもありました。
 そして今、人間は三たび、自然のあるがままの姿に手を加えようとしています。この第3番目のこそ「IT革命」です。それは、「脳の機能を『代替』する機械」による社会の創造を意味します。一般に理解されているIT革命とは、情報技術による社会構造・産業構造の大変革や地球規模の経済活動の大変革などを指し、人々のくらしはこの上なく便利なものとなり、経済や社会はこの上なく効率のよいものとなり、政治や国際社会にはこの上ない民主主義が広がるだろうという期待があります。
 日進月歩ならぬ「秒進分歩」とまでいわれるITの進歩は、ごく短時間のうちに経済・社会の様相を変える可能性をもっています。しかし、そこにはプラス面だけではなく、マイナス面があるということもよく知っておく必要があります。近代農業の発達は美味で豊かな食卓を約束するものでした。しかし、農業が自然の一部を破壊するものであることを心にとめておく必要があります。近代工業の発達もまた、私たちの生活や社会を便利で豊かなものへと変えてきました。それにもかかわらず工業が自然の一部を破壊するものであることは、今日の環境問題等で明らかなことです。
 ITの発達は、コンピューターやインターネットを生み出し、人と社会とのつながりを、かつてはまったく考えることが出来なかったような短い時間で、しかも全地球規模で可能にしました。それは、人間により多くの可能性を約束するものであるということができるでしょう。IT革命が、第1,第2の革命に匹敵するほどのものであるという理由は、それが「脳の機能を機械に『代替』させる」ことにあります。発達した脳が人間と他の生き物との基本的な相違であるという点で、この第3の革命は、人間という社会的生物にとってきわめて重大な意味ををもっています。それは人間の本来のコミュニケーションを歪めることはないのか? それは消費者や企業の思考力や創造力を低下させることはないのか? それは子どもの精神的発達を損なうことはないのか? こうした疑問は、IT革命のバラ色のイメージに隠れてあまり表に出て来ませんが、それを危惧する人々は日本にもアメリカにも少なからず存在しています。その意味で、IT革命のただ中に生きる私たちは、その大いなる恩恵に期待しながらも、もたらされるかもしれないマイナス面に心をくだき、冷静に対処して行く必要があります。そうしてこそ人類は、第1、第2の革命に匹敵する第3の革命を成し遂げることができるでしょう。